竹鼓を鑑賞してくださる方へ
花にとって優しい音楽は本来、人間にとっても優しく、その生命を長く保ち、育ててくれます。竹鼓はそんな想いの中、生まれました。竹を用いた楽器は中国、東南アジア、日本など米を主食としてきた農耕社会の中、生まれてきました。その文化が危うい中、日本の竹文化も衰退してきています。
竹の育つ環境にも適している地域での独自の竹文化。地球には多様な環境と、それに応じた文化があります。雨乞いなど、水との係わりが深かった竹が水の危うさの中、消えてゆこうとしています。水豊かな国の水が危ういことは重大なことです。他の自然界の生物が自然としっかり結びついて生きている中、人間だけが、人間の果てしない欲望の為自らの生命の糸を断ち切ろうとしているように見えます。今、見捨てられようとしている竹という自然からの贈り物を用い、新しい音楽を創り出すことはそんなことからも大切なことだと思っています。
余りに素朴で余りに未完に聞こえる竹鼓の音色は、それ故にこそ、分化されつくしてしまった私達の心と身体をより元の生命に近付けてくれる様に思うのです。
竹鼓の演奏は聞いて頂くためのものというよりその中で快く寝て頂くためのものと考えています。どうぞ演奏中、心おきなくお休みください。


琵琶湖博物館での「竹鼓ワークショップ」より 写真提供:木川通信第12号(インターネットサイト)